嗚呼、今日も眠れない。
もう何日寝ていないのだろうか、数えるのも億劫だし、数える必要も無い。
寝た所で襲い掛かる悪夢は、傷をえぐり、体力を奪い、俺を無理矢理現実へと追いやる。
子供の頃は精神安定剤なんて沢山投与されてたが、そんなもの効かない位に悪夢は強かった。
暴れ、喚き、ボロボロになった俺を抑えつけたのは誰だったか。
腕に刺された針の感覚、注入される薬、ぼんやりしていく視界、襲う闇。
つかの間の睡眠は悪夢に破られ、また暴れ狂った。
『出せっ!!ここから出せええぇぇええ!!!!』
軋む檻、血が飛び散る壁。ろくに飯も喰わずに暴れ続けた。
誰だったか、このままじゃ死ぬ、と俺に言ったのは。
本当に死にかけて病院に運ばれたわけだったが。
アルジェントアラに入ってからも。
ずっと悪夢は隣にいた。
『お父さん!!』
悪夢への恐怖に一度、昔に貰った精神安定剤を全部飲んだ事がある。瓶に一杯詰め込まれた錠剤を全て体へ。
頭がグラグラし、体は冷え、冷や汗が止まらず、異常なまでの吐き気に立つ事も出来ず、倒れた。
だが、悪夢はそんな時でも俺を現実へと追いやった。
目が覚めた瞬間、酷い吐き気と倦怠感に襲われ、動かない体を叱咤してトイレまで這って行って吐いたのだ。
薬など無意味な事がわかった。
『殺してやる』
幼い頃からの精神安定剤。
それがマフィア殺し。
家族を奪ったマフィアに復讐する事が俺の生きる理由だった。
幼い俺は『マフィア』というものが家族を奪ったものだと思っていたから、マフィアと聞いたら皆、殺した。
今は家族を奪った奴が『マフィア』であったという事は理解している。
だが、刷り込みは恐ろしい。
『マフィア』は皆殺さないと済まないようになってしまった。
『殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!』
憎しみは止まらなかった。
『同じ苦しみを味あわせてやる!!』
奴らにも仲間や家族がいるのを知っていて、俺はそう笑ってた。
何処かが狂ってたんだ、きっと。
流石に今は、何もしていない奴は殺す事はしない。捕まえるだけ。
裁判で殺し専門は死刑。盗み専門などは懲役。
俺が殺すこともない。
『本当は違うくせに』
そう。でも、でもだ。
殺せないマフィアが現れたらどうする?
例えば、仲間の友人、恋人、家族。
仲間と俺の憎しみ、天秤にかけたら勿
論仲間のほうが大切だ。
けど、だけど。
幼い頃からの憎しみは、そう簡単に黙っちゃくれない。『殺せ殺せ』と俺に言う。
仲間の悲しむ顔なんか見たく無いのに。
仲間を失う事を恐れてるのに。
『嗚呼、どうすれば!!』
簡単な事だ。
手を握って、握って、血が出ても握って耐えるだけさ。
(だって皆幸せそうに笑うんだ)
(それを奪う権利は無いだろ?)
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