「なんかさ、御免」
過去とかマフィアとかなんだとか、どっかの馬鹿息子と違って俺は気にしない。
だからよ、んな顔してんじゃねぇよ。
「張っ倒すぞ、馬鹿」
そう言うと奴は困った顔しやがる。
いつものへらへら顔は何処までが本当で何処までが嘘かなんて俺にはわからない、わかろうとする気にもならない。
『嘘』という名前を持ったソイツを丸ごと好きな訳だ、わからなくたって構わない、関係無い。
「えー…痛いのやだなぁ」
「見た目で痛たかったけどな」
「そんな事言わないでよー、おっさん傷ついちゃう!!」
何で今目の前で俺のベットに座る風呂上がりのソイツは全身血だらけだったのかとか、聞かなくてもわかる。
全くどいつもこいつも本当に俺の胃に穴を空けたいらしいな。
「…わざとらしい」
へらへらしやがって。
「ん?」
「いや、馬鹿だなって」
「酷っ!!」
本当、わざとらしい。
ファルソと出会った時。
一瞬見せたその顔を、俺は知らない。
その後また一瞬見せた顔は、よく知っていた。
仲間内で見慣れたその顔を、俺は見たく無い、悲し過ぎる。逃げ切れない過去、惨い現実、もう訪れる事の無い仲間の未来、叶わない夢…精神が悲鳴を上げている、その痛みに耐えるその顔が俺は嫌いだ。
そして今。
何時ものへらへらした奴の顔がそこにある。
「…なぁ」
「んー?」
「……」
少し位、教えてくれよ。
少し位、頼ってくれよ。
何度も何度も何度も何度も、何度も。
言い過ぎて擦り切れた、誰に言ったかなんて把握しきれないそんな言葉。
それを今、こいつに投げ掛けたらどうなるか、なんて考えつかない。
何時もみたいにへらり、と笑うのか。
泣くのか、怒るのか、もしくは感情さえも消えてしまうのか。
なぁ、お前はひとりで立つつもりか?
なぁ、お前には聞こえるか?悲鳴。
「…お前もか」
「何が?」
俺ってそんなに、頼り無いのかよ。
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