そう、それはいつもの事だった。
「……あ…!!」
チ ガ ミ タ イ
自分の中のもう一人の自分が目覚める、そんな感覚。
血を欲する、ソールの血がざわめいているのが分かる。
そういえばここ最近、戦闘らしい戦闘もしていなかった。
「…く…そぉ…」
今、自分の前に仲間が現れたら。早く部屋に戻らなければ。
そう考えた時、見えた水色の髪。
「…あ…あぁ…あ…!!」
今、出会ったら、話しかけられたら、確実に……
「そ…んなの、嫌だあぁぁあ!!」
振り下ろされた腕の先には、
パリン!!
窓硝子。
窓硝子は粉々に砕け散った。
腕に鋭い痛み。硝子で深く切ったのだろう、服には真っ赤な血が滲んでいた。
タ リ ナ イ
しかし、振り回そうとした腕は、別人の手に捕まれていた。
ノルたん。
「の…る……」
「ダ、め」
そう言うとノルたんは、何時ものように高く、高く笑い出した。
そう、俺がノルたんの地雷を踏んだのだ。
「ヒャハハハ!」
「ノル…ノルたん…!!」
「知らない、知らない知らない知らない」
すぅ、とノルたんが撫でた手の平から流れる血。
ぼた、ぼたぼた、と血が床に滴る度、徐々に引いていく血への渇望。
「ノルたん!!やめろ!!おいっ!!やめてくれ!!」
正気に戻っていく中で、仲間に血を流させ、仲間の血をみて満足した自分への怒りが込み上がってきたと共に、彼を止めなくては、と必死に呼びかけた。
彼は戻ってこない。
「ノル…っ!!」
「知ら、ない」
ぷつ、と糸が切れた操り人形のように、ノルたんはがくり、と膝をついた。
覗き込めばぐる、と俺に顔を向け、
「大丈夫ゥ?」
と笑う。
そういつもの笑顔で。
「……あぁ」
俺は微笑んだ。
ちゃんと笑えたかは分からない、だが
俺は笑った。
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