「………」
幸せそうだ。
なら、いい。
ぼんやりと、空いたクロチェの机を眺めて、最近幸せそうにしているクロチェを思い浮かべた。
「……それにしても…暇、だな」
散歩にでも行くか。ついでにクロチェに会ったらからかってやろう。
何となくそんな事を思って外に出た。
背中から「マフィア狩りは程々にしろよ!!」と仲間の声がしたが、気にする事は無い。
別にマフィアを狩りに行く訳じゃない、いたら狩るけど。
最近毒まんじゅうを見かけた事は無い気がする。
何時からだったか…あぁ、あの時からか。俺が暴走した時。
会いに行くべきだったか、まぁいい。
俺も色々(主に親父辺りの事で)忙しかったしな。
なんて考えてたら電話が鳴った。アルジェントアラからだ。
「…なんだ」
少女が暴行を受けた、今すぐ確保に向かえ、という。
「おいコラ、こっちは非番だ」
と言えば、お前が一番近いと言われた。
くそ、GPSめ。まぁいい、マフィアだったら狩っておこう。
現場に向かえば、本当に男が転がっていた。蹴っても起きない、引きずって行こう。
側には割れたサングラス。
「……これは、毒まんじゅうのか」
あいつ、光が駄目じゃ無かったか?
聞いていないが、多分保護されただろう。
だがもしされていなかったら。
チェルカーレバンビーノとはいえ、危険な状態だ。
「…はぁ」
少し辺りを見る事にした。
勿論男は引きずっていく。
ふと、眼鏡屋の前を通ったその時。
「…………あ」
「……クレセアさん」
曲がり角でクロチェと鉢合わせた。
なんだこのお約束みたいな再会は。
「え!?クレセア!?」
隣には目隠しをした毒まんじゅう。
クレセアーとぴょんぴょん跳ねている毒まんじゅうはともかく、なんだこの気まずい空気は。
「………それ」
「…あぁ、拾った」
「クラウを襲った」
「………うぅん…」
男が唸る。
目を覚ましたらしい、引きずったのが悪かったか。
クロチェの顔に警戒の色が走った。
「……あれ…お」
「寝てろ」
「ぐぎゃっ」
鳩尾に踵を落として、奴の意識も落とした。
ついでに何発か蹴飛ばしておく。
「これで引きずっても暫く起きないだろ」
「ここまで引きずって来たんですか…それはクラウの薬でも起きますね」
「ヘ?ナニナニ?どうしたノ
?」
毒まんじゅうが首を傾げている。
「おい、毒まん」
「毒まんっ!?ソレってボクの事!?」
「お前以外に誰がいる」
ヒドイヨ!!と頬を膨らませたのを潰せば、ぷっ、と面白い音を立てた。本当面白い。
もっと遊んでやりたい所だが、この男がいるし、クロチェに悪い為、この変でやめてやる。有り難く思え。
「この間は怖がらせて悪かったな。もう大丈夫だ」
「何かあったんですか?」
「聞くな。俺の人生最大のトラウマと汚点だ」
不思議そうに首を傾げるクロチェと、ポカーンと大口開けている毒まんじゅう。漫画みたいな綺麗な犬歯見えている、抜くぞそれ。
「じゃあな。いいサングラス買ってやれよ、クロチェ」
そうヒラヒラと手を振り、踵を返した。
全く、恥ずかしい事言わせやがって。
「……あれ?」
「どうしたノ?クロチェ?」
「クレセアさん、本部と違う方向に歩って行ったけど……ん?」
「クロチェ…?」
「うぅ…」
「起きたか」
男に銃口を向けると、男の顔から血の気が引いていった。
「お前っ…!?」
「マフィアだな」
かち、と銃の安全装置を外した。
「アルジェン…トアラ…!?」
「さぁな」
「…くそっ!!」
男がナイフを取り出した
「お前、邪魔なんだよ」
ガゥンッ!!
その手を吹き飛ばした。
「う…あぁ…!?」
「俺にとっても、あいつらにとってもな」
後ずさる男。
男に近付く足音。
「い…嫌だっ…来るなぁ!!」
「泣こうが喚こうが、ここはお前ら位しか使わない裏道。誰も来やしないさ」
そして、最期に冷笑。
「死 ね」
絶叫と銃声の不協和音。
幼い頃から幾度と聞いたそれはもはや何の感情も与え無かった。
「死の…臭いが……した」
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