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【2025/07/04 00:46 】 |
視えない過去

R.N!企画
ファルソさんお借りしました。

違和感。
自分を見て挨拶そこそこに、そそくさと立ち去ろうとする彼の腕を、無意識に掴んでいた。


「…………」

「…………」

「…………」

「…な…何か用なら言って欲しいなぁ」

「…………」

「ねぇー」


この人は。
ノークトと共に狂気に巻き込まれた人物。ファルソ、という名前だと記憶している。
謝罪位は、とネロネーヴェまで会いに行こうと思っていた所でたまたま会うとは。


「あーもう…」


違和感。
先程からずっと覚えていた違和感。
いや、初めて会った時かもしれないが仕事中であった為か、違和感を覚えた記憶は無かった。


「…………」

「お兄さーん、おーい」

「…あなたは」



ミ エ ナ イ



「あなたは、」

「えーと…名前?」

「違います」


何も視えない、彼からは。


「…取り敢えず、離してくれない?」


ふと、我に返り、彼の腕を握ったままであった事に気付いた。


「おっさんこれから行かなきゃならない所が…」

「…………あ、」


ふわり、と暖かい感覚。


「ん?何?」


一瞬視えた、淡く儚いそれは『生きている者』の想いか。死者で、無く。
様々な者から見える、ある時は横で見守り、ある時は狂気的なまでのそれ。
恋慕、情念、愛情。
今、『今生きている者』しか視えない。
昔、『死んでいる者』は視る事が出来ない。
過去が無い、彼には。

…嗚呼、


「そうか…」

「え?……え?」


世界を、拒絶する術がある。


「貴方は、『今は』生きているのですね」


全てを、拒絶する術がある。


「何時から『今の貴方』になったのか、私はわかりませんが」


幾度と無く視てきたそれを、自分も通った道を、何故忘れていたのか。


「大切な物があるなら、もう『死んではいけません』よ」


それは、死。
肉体にも精神にも、平等に訪れるソレ。


そうか、彼は死んでいた。
そうだ、彼は死んでいた。


「貴方の事は何も知らないですけど、ね」


戻ってこないのは護る必要が無い位彼が強いと感じたのか。


「この間といい…今といい……頭大丈夫?」


彼が死んでいる間に旅立ってしまったのか。


「それは失礼な、傷開いてあげましょうか?」


自分には視えない、何処か遠くで見ているのか。


「やめて!!おっさん痛いのやだ!!」


自分のように愛を貰え無かったのか。


「冗談ですよ」


過去の無い彼からそれを知る術は無い。


「どうせ、言った所で信じてなんてくれないのでいいです」


知った所で仕様が無いと思う。
今が幸せならいい。


「…やっぱり頭大丈」

「ひ、ら、き、ま、す、よ?」

「おっさんこれでも心配してるんだよぉ!!」


むっすりしてこちらを伺う彼からは、ぷんぷん、と効果音が聞こえそうだ。
そして目はちゃんと警戒を忘れていない。
流石、という訳だ。


「まぁ、貴方に会いに行こうと思っていた所ですし。この間はご迷惑をおかけしました」


ケーキ食べます?と箱を掲げて聞いたら全力で拒否された。甘い物は嫌いらしい。
ただ、


「あ、そういえばケーキ好きだっけ」


とケーキの箱に手を伸ばし、受け取った。


「それでは、お忙しい所申し訳ありませんでした」

「じ…じゃあね」


そそくさと、こちらを警戒しながら行ってしまった。


ふわり、と暖かい風が吹く。


『あまり虐めてやるなよ』


ククク、と笑う声は誰の者かは分からないが懐かしい響きを帯びていた。
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【2010/02/01 22:27 】 | R.N!企画 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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