握った手は熱かった。
「何で貴方といるとこう、面倒な事になるんでしょうか」
「オイラのせいじゃないからな!?」
「静かにして下さい、見付かりますよ」
普通に、普通に道を歩いていただけなのに。
いきなり走ってきたボーラに手を引かれ、気付いたら何処かのマフィアと追いかけっこ。
今は裏道に潜んでいるが、まだマフィアは辺りをうろうろしていた。
全く、しつこい。しつこい奴は嫌われますよ。なんて。
「…早くどっか行かないかな」
「そうですね」
こっそり辺りを伺って、そう呟いた。
まだうろうろと探しているようだ。
(あ…手)
握ったまま。
意外に大きな手なんだな、なんて嗚呼、何考えてるんだ!!
男らしいな、とか、ときめいたりはしていない!!断じて!!
ふと、何で慌ててるんだろう、と思った。別にやましい事を考えてる訳じゃな…
「どうした?ハロウ」
ひょい、といきなりボーラの顔が視界いっぱいに広がった。
「うわっ!!」
ぼんやりしていたらしい、具合でも悪いのか、と言いたそうな、心配そうな顔をしている。
「どっか怪我した?」
それとも熱?と、ボーラはこつ、と額をぶつけてきた。
近い近い!!顔近い!!
「熱は無さげ、だけどな」
「ちょっ…」
「ん?やっぱり怪我?」
「いっ…いえ!!何でもっ!!」
「ならいいんだけどさ、声デカイって」
「…すいません」
もう少し手を握っていたい、なんて断じて思っていない!!決して!!
でも手を離さないのは、自分の手が冷たくて、ボーラの手が温かいから、という事にしておく。
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