漆黒の風が吹いた。
「何のつもりですか、コエルテーノ」
目の前に突き付出された刀。
それと同じ位、もしくはそれ以上冷たく言葉は響く。
漆黒はニコリ、と笑う。
「何処に行くのかな?」
「何処であろうと、貴方には関係ありませんよ」
「うん、なら教えてくれてもいいじゃん?」
二人を包む威圧感と殺気。それはどちらから発せられるものなのか。
漆黒の風はただ笑い、蒼海の青年は冷めた目を細める。
「殺しに行くんだ、ってさ?」
蒼海の瞳に光は無かった。
「…………勿論」
にたり、と口が弧を描く。光の無い瞳は大きく見開かれた。
ただの、狂人。漆黒にはそう思えたかもしれない。
蒼海は『今は』狂っていた。
「まだ足りないの?飽きないね」
「全然。足りませんよ」
ここに来る前だって、沢山ヤってきたのにね、返り血浴びて無いなんて珍しい。と漆黒は笑顔を崩さずに言う。
「何人殺ったんだい?」
「さぁ」
「でもねぇ」
く、と闇を具現化した大剣が動いた。
「今日は、オシマイ」
バキ、と痛々しい音が響く。
蒼海は10m程先に吹き飛ばされ地面に横たわっている。
「正気に戻った?」
その言葉にピクリ、と蒼海が動く。
ゆっくりと目を開け、蒼海の瞳が漆黒を捉えた。
「…あなた…でしたか。少しは…手加減して下さいよ………いたっ…!!」
やっと、といったように蒼海、トパーズが体を起こす。
瞳に光は戻り、痛みを耐えて顔には微笑みを浮かべていた。
「貴方は…ジオヴォルノでしょうか」
「さぁ、どちらでしょう」
「…まぁいいです。全く、仕事に支障が出たらどうするんですか」
「これ位、大丈夫でしょ」
「……肋骨2、3本折っておいて何がこれ位ですか」
止めて下さった事は感謝しますが、とトパーズは頬を膨らませる。
子供っぽいねぇと漆黒、ジオヴォルノは笑った。
「最近増えたねぇ」
「…そう…ですかね、でしょうね」
「少しは強くならなくちゃ駄目だよー首領なんだからー」
「いやはや申し訳ないです」
トパーズは苦笑。
ジオヴォルノはかわらずニコニコしていた。
最近増えた暴走回数、殺した人数も急激に増加した。このままでは政府やアルジェントアラばかりか他のファミリーにも目をつけられかねない。
「本当に
人殺しが嫌いなのか疑問だよね」
「嫌いです。でも仲間に危害が及ぶなら、私は嫌でも殺りますよ」
「ふーん」
仲間を守る間違えた方向。
トパーズが気付いているのかいないのかはわからない。
そしてそんなトパーズの暴走を止める役割を持ったのは何時からか。
ジオヴォルノは一瞬考えて一瞬でやめた。
「強くなりな、『マーレカテーナ首領、トパーズ』」
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