運び屋だ。
そうクラウは紹介した。
「なんでも運んじゃうんだヨ!!」
早くて安心安全、ボクのお墨付き!!
と胸をはって言った。
「ありがとうございます、はい、紹介料です」
「わぁ~い!!ありがとうっ!!」
「強力な眠り薬ですから、使う時は薄めて、調合する時は周りを確認して使って下さいね」
「分かってるヨ!!コレ吸ったら一生起きないかもしれないもんネ!!」
流石。
まぁ、クラウなら大丈夫だろう。
「それで…あなたは」
「ウェルスって言うんだヨ!!」
ずっと黙って話を聞いている人物に向き直る。
『彼女』は黙って軽く頭を下げた。
「よろしくお願いします」
美しい、可愛い、というよりは格好いい、という形容詞が彼女には似合うだろう。
ぱっ、と見た感じは青年だ。
背格好も中性的な体型であるし、服装もまたそう。
ただ、女の子なのだ、という事はわかった、何故分かったと理由は特にない。
敢えて言うならやけに美形の集まるマーレカテーナ、そこの首領であるから分かるのだろうと思った。目が慣れているのだ。
別に女であっても関係はない。
女であっても普通に仕事をする者や、差別偏見から女である事を隠す者、敢えて女である事を武器にする者もいる。
この世界はそんなものなのだ、区分する方がおかしいと思う。
「えぇと、運んで欲しい物なのですが…」
手に持っていた物を差し出した。
「これは…ケーキ、か?」
「ケーキっ!?」
「見た目はそうですよ、見た目は」
勿論ケーキも入っているが、中にはいつものように、取引のブツの場所が描いてある地図と金庫の鍵。
取引の際に気に入ってくれたのか、向こうからケーキにしてくれ、と言われる事が多々あるのだ。
「相手は信用出来る所なので、少なくとも相手方からの奇襲の心配はありません」
ね、クラウ?と言えば、ボクの情報に間違いは無いヨ!!、とドン、と胸を叩いて噎せていた。
「ただのケーキだったら料金は違うが、これは少し高く貰うぞ」
「構いませんよ。ただ、別の組からの奇襲があるかもしれません。その時には何処の者か、被害状況はどうかを言って下さい、それによって料金を割り増ししますから」
後、敵は潰さなくてはならないので。
心で呟いた。
最近、マーレカテーナをよく思わない所からの奇襲が増えてきており、怪我人も
多く出ていた。そろそろ一掃しようかと考えている。
「分かった」
「トパーズは太っ腹なんだヨ!!」
「そうでもありませんよ」
この業界は信用第一、お金は多めに払います。
顧客は増えているから今の所は結構黒字。
品は良品をぼったくりスレスレで売っているが、相手は安い、品がいいし種類もあると言う。裏社会はそんな物。
『彼女』が『彼』となって『女』を隠すのと同じ事。
「これが地図です。よろしくお願いしますね」
ここに生きるからこそ、こんな物、と割り切らねばならないのだ。
「トパーズ!!ボクもケーキ!!」
「ハイハイ、あ、ウェルスさんもどうですか?」
「いや、これ届けなくていいんですか…」
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